起業家でBreakingDownのCOOを務める溝口勇児氏が、通称「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物をめぐる事件で起訴された滝口涼介被告と、一緒に写真に収まっていたことが波紋を広げている。報道された写真の一枚には、広島東洋カープの矢野雅哉選手、滝口被告、溝口氏の3人が、東京・六本木のバーで並ぶ姿が写っていた。
滝口被告は、当時カープに所属していた羽月隆太郎氏へ、指定薬物エトミデートを含むカートリッジを譲り渡した罪などで起訴された人物だ。溝口氏は報道を受け、自身のXで撮影に至った経緯を説明した。
滝口被告については、プロ野球選手のコンサルタントをしている人物だと聞いていたとし、自身のファンとして、選手と一緒に写真を撮ってほしいと頼まれたため撮影に応じたとしている。そのうえで、自分の脇が甘かったとしつつ、ファンから選手と一緒に写真を撮ってほしいと言われれば、普通は撮ってしまうのではないかとの趣旨を投稿した。
しかし、この説明を受けてもXでは、本当に写真撮影だけの接点だったのか、説明が簡潔すぎるのではないかと、疑問や違和感を示す投稿も見られている。
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カープ選手と滝口被告、溝口氏が六本木で同席
報道された写真の一枚には、左から矢野選手、滝口被告、溝口氏が並んでいた。別の写真には、2025年5月に撮影されたものとして、滝口被告、羽月氏、矢野選手、小園海斗選手、田村俊介選手らが写っていたとされる。さらに、カープが地方で試合を行った際に撮影されたという、滝口被告と矢野選手の写真も報じられている。
滝口被告は、羽月氏にエトミデートを譲り渡した疑いで逮捕され、その後、医薬品医療機器法違反の罪で起訴された。羽月氏もエトミデートを使用した罪に問われ、有罪判決を受けている。公判では、知人から複数回にわたってカートリッジを購入し、カープの寮へ郵送させていたことも明らかになった。
「ファンだから撮った」という説明にXで違和感
溝口氏の説明によれば、滝口被告はプロ野球選手のコンサルタントをしている人物として認識しており、自身のファンとして写真撮影を求められたため応じたという。
また、当日溝口氏と同席していたという西川将史氏からは、溝口氏側とカープ選手側は当初、別のテーブルで飲んでいたとの説明も出ている。西川氏によれば、BreakingDownが好きなカープ選手から声をかけられ、溝口氏が選手側のテーブルへ移動。その場で滝口被告を含めた写真撮影に応じたという。
この説明に沿えば、溝口氏が滝口被告と会うことを目的として参加した会食ではなく、同じ店にいたカープ選手側から呼ばれ、その場で写真に加わったという構図になる。少なくとも溝口氏側からは、写真撮影に至った経緯について一定の説明が示されている。
それでもXで違和感を示す声が残っているのは、六本木のバーでカープ選手と滝口被告を交えて撮られた写真の印象と、ファンに頼まれて撮影したという説明の間に、距離を感じる人もいるためだろう。写真撮影の前後にどの程度の会話があったのか、溝口氏が当時、滝口被告をどのような人物として認識していたのか。そうした点について、もう少し詳しい説明を求める投稿も見られる。
「また溝口氏」と受け止める声も
今回、Xで見られる反応のなかには、写真一枚だけでなく、溝口氏をめぐる過去の騒動と重ねて見るものもある。また溝口氏の名前が出てきた、問題が起きてから説明や謝罪をする流れが繰り返されているのではないか、といった趣旨の声だ。
記憶に新しいのが、溝口氏が運営に関わる事業から生まれたプロジェクトをめぐる「SANAE TOKEN」騒動である。このトークンには高市早苗氏の名前が使われ、溝口氏も当初、高市氏側とコミュニケーションを取っているとの趣旨を説明していた。
しかし、その後、高市氏本人がトークンへの関与や承認を否定したことで騒動が拡大。溝口氏側は、コミュニケーションや認識の共有が十分ではなかったとして謝罪し、プロジェクトの停止やトークン保有者への補償方針を示すことになった。
サナエトークン騒動と今回の写真は、当然ながら同じ性質の問題ではない。一方は政治家の名前を冠したプロジェクトをめぐる認識の食い違いであり、もう一方は後に薬物事件で起訴された人物との写真をめぐる問題だ。
それでも、相手との関係性や認識を十分に確認しないまま自らの名前や影響力が使われ、問題が表面化してから説明や謝罪に追われるという点に、共通した危うさを感じる人もいるのだろう。サナエトークンでは、相手側との認識共有が不十分だったとして謝罪し、今回は、後に薬物事件で起訴された人物との写真について、脇が甘かったと説明することになった。
一度なら偶発的な失敗として受け止められても、似たような形で「確認が足りなかった」「認識が十分ではなかった」という説明が続けば、Xで「またなのか」と見られるのも当然だろう。
著名人との写真が生む「信用」
溝口氏はBreakingDownをはじめ、格闘家、経営者、インフルエンサー、政治家、スポーツ選手など、幅広い人物と接する立場にある。その行動力と人脈は、溝口氏の事業を成長させてきた大きな武器でもある。
だが、人脈によって注目や信用を集めるのであれば、自分の名前や顔が、相手にどのような信用を与えるのかにも慎重であるべきだ。著名人本人に深い交友関係を示す意図がなくても、写真を見た第三者は、この人物は有名人やプロ野球選手とつながりがある、信用できる人物なのだろうと受け止める可能性がある。
特に今回の写真には、現役のカープ選手と、BreakingDownを運営する著名な実業家が一緒に写っていた。滝口被告が写真を人脈の誇示や信用づくりに利用していたかどうかは明らかになっていないが、こうした写真が、撮影した側の知らないところで信用の材料として機能する危険はある。
もちろん、交友関係の広い人物が、接した相手すべての経歴を確認することは現実的ではない。しかし、今回のようにプロ野球選手を交えた六本木のバーで撮影された写真を、街中で突然ファンに求められて撮った一枚と、まったく同じものとして扱うことにも無理がある。
自分にとっては一度のファンサービスでも、相手にとっては社会的な信用を補強する一枚になる。人脈を武器にする以上、その人脈から生まれる利益だけでなく、自らの名前や顔が他人へ与える信用の重さも引き受けなければならない。
「脇が甘かった」で何度まで済ませられるのか
溝口氏側からは、カープ選手に呼ばれて別のテーブルへ移動し、ファンだという滝口被告を交えて写真を撮ったとの説明が出ている。その説明自体を否定する材料は、現時点では示されていない。
だが、説明が成立していることと、影響力を持つ人物としての判断に問題がなかったことは別である。サナエトークン騒動では、相手側との認識共有の不十分さを謝罪し、今回は、人脈と写真の扱いについて脇の甘さを認めることになった。
問題が起きるたびに、知らなかった、認識が違っていた、頼まれただけだったと説明する。一つ一つを見れば、それぞれに事情はあるのだろう。しかし、同じように問題が表面化した後で確認や認識の不足を説明する展開が続けば、もはや個別の不運だけでは片づけにくくなる。
今回問われているのは、写真から薬物事件への関与を推測することではない。人脈と影響力を武器にしてきた人物が、その力を扱うための慎重さを、本当に持ち合わせているのかという問題だ。
「脇が甘かった」という言葉は、自身の判断の甘さを認めただけにすぎない。それで、なぜ同じような問題が繰り返されるのかまで説明したことにはならない。
一度なら失敗で済む。だが、確認不足や認識のずれが何度も問題になるのであれば、もはや問われているのは一度の判断ではない。人脈と影響力を扱う姿勢そのものだ。
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