2026年7月13日に発売された『週刊少年ジャンプ』33号が、各地の書店やコンビニで相次いで完売し、波紋を広げている。
同号には、『ONE PIECE』の連載29周年を記念した『ONE PIECEカードゲーム』のプロモーションカード「モンキー・D・ルフィ」が特別付録として封入された。カード人気を見込んだ集英社は、通常より50万部多く発行し、購入も1人1冊までとするよう呼びかけていたが、発売当日には売り切れ報告が続出した。
一方、同じ33号では、三浦糀氏による人気漫画『アオのハコ』が約5年間の連載を終え、最終回を迎えている。しかし、表紙で大きく扱われたのは『ONE PIECE』と付録カードの告知だったことから、『アオのハコ』の読者を中心に複雑な反応も広がっている。
100円あったらトレトクに行こう!最終回よりカードが目立った『アオのハコ』完結号
『アオのハコ』最終回号なのに表紙はワンピース
『アオのハコ』は、2021年に『週刊少年ジャンプ』で連載を開始した青春恋愛漫画。バドミントン部の猪股大喜と、バスケットボール部の鹿野千夏を中心に、部活動と恋愛を丁寧に描き、テレビアニメ化もされた人気作品だ。
33号に掲載された第250話をもって連載を終了。最終回はセンターカラーで掲載され、約5年間にわたる物語に幕を下ろした。
通常、長期連載作品の最終回は、作品や作者を大きく扱う特別な機会となる。しかし今回の表紙では、『ONE PIECE』の連載29周年と付録カードが前面に押し出され、『アオのハコ』の完結は表紙上で大きく目立つ扱いではなかった。
『ONE PIECE』がジャンプを代表する作品であり、連載29周年の記念号でもある以上、表紙を飾ること自体は不自然ではない。それでも、『アオのハコ』にとっては一度しかない最終回であり、長年作品を追ってきた読者からは、もう少し完結を大きく扱ってほしかったという不満が出ている。
さらに、付録カードを目的とした購入者が集中したことで、最終回を紙の雑誌で読みたい読者がジャンプを入手できない事態も発生した。作品の完結を見届けたい読者にとっては、表紙だけでなく雑誌そのものまで『ONE PIECE』カードに奪われたように映った面がある。
通常より50万部増でも完売続出
33号の付録となったのは、『ONE PIECEカードゲーム』のプロモーションカード「モンキー・D・ルフィ P-159」。紙版のジャンプ1冊につき1枚が封入されている。
集英社はカード人気を考慮し、同号を通常より50万部多く発行。発売前から1人1冊での購入を呼びかけ、一部書店では予約を受け付けず、店頭販売のみとする対応も取られた。
しかし、こうした対策を行っても需要を吸収しきれず、発売当日には売り切れる店舗が相次いだ。フリマサイトでは発売前から出品が確認され、発売後も付録カードやカードを抜いた雑誌が多数出品されている。
ジャンプを毎週購入している読者だけでなく、カードゲームのプレイヤーやコレクター、値上がりを期待する購入者まで同じ商品に集中したことが、異例の品薄につながったとみられる。
付録を目当てに雑誌を購入すること自体は禁止されていない。しかし、漫画を読む予定のない購入者によって雑誌が売り切れ、普段から掲載作品を読んでいる層が買えなくなる状況には、販売方法そのものへの疑問も出ている。
完売の原因となったカードが「買取不可」に
ジャンプ本誌が入手困難になる一方、付録カードについては、一部のカードショップが買取不可または極端に低い査定額を設定している。
今回のカードは「特別限定」と銘打たれているものの、通常より50万部増やして発行されたジャンプに封入されており、市場に出回る枚数は非常に多い。また、電子版の定期購読者を対象に、通常仕様と箔押し仕様をまとめて入手できる応募者全員サービスも実施されている。
そのため、発売直後にはフリマサイトで高値が付いていても、カードショップ側にとっては今後の流通量や価格下落のリスクが大きい。すでに在庫が増えることを見越し、通常の買取対象から外した店舗や、事実上の買取拒否に近い1円査定を提示する店舗も現れた。
もちろん、買取価格や買取の可否は店舗によって異なり、すべてのカードショップが買取を拒否しているわけではない。それでも、カードを目当てにジャンプを購入した人が相次ぐ一方、そのカードにはほとんど買取価格が付かないという状況は、今回の騒動をより皮肉なものにしている。
転売目的で複数冊を確保しても、フリマサイトで買い手が見つからなければ、カードショップへ持ち込んで現金化することは難しい。大量に発行された付録カードは、希少に見えても、必ずしも高額で売れるカードではない。
カードだけ抜かれたジャンプが出品される事態も
フリマサイトでは、付録カード単体だけでなく、カードを抜いたジャンプ本誌も出品されている。
カードを目的に購入した側にとって、雑誌本体は不要となる。反対に、『アオのハコ』の最終回を読みたい人にとっては、カードよりも雑誌本体の方が重要だ。
結果として、一つの商品がカードと雑誌に分解され、それぞれ別の相手へ転売される構図が生まれている。ジャンプが漫画雑誌ではなく、カードを流通させるための包装として扱われているような状態だ。
中古で安く本誌を購入できればよいという見方もあるが、最終回が掲載された号を新品で購入し、作品の完結をその日に見届けたかった読者の体験は取り戻せない。
とりわけ今回は、『アオのハコ』の完結号でありながら、表紙では別作品の付録が前面に押し出され、その付録を求める購入者によって雑誌が品薄になった。作品の読者が不満を抱く背景には、単なる売り切れ以上の事情がある。
マック「ちいかわ」でも起きた付属グッズ争奪戦
本来の商品よりも付属グッズに人気が集中し、本来の客が買えなくなる問題は、ジャンプだけで起きているわけではない。
マクドナルドのハッピーセットでも、「ちいかわ」やポケモンなどの人気グッズが登場した際に購入者が殺到し、早期販売終了や高額転売が問題となった。
ハッピーセットでは、玩具だけを目的に大量購入し、ハンバーガーやポテトなどの食品を放置する行為も確認されてきた。マクドナルド側は個数制限や販売方法の変更を行い、フリマサービス側も一時的に関連商品の出品を制限するなどの対策に乗り出している。
今回のジャンプも構造はよく似ている。付属するカードだけが目的となり、本体である漫画雑誌への関心が薄い購入者が殺到する。その結果、漫画を読みたい通常の読者が商品を買えなくなる。
付録や限定グッズは商品の販売を伸ばす有効な手段だが、人気が本体を上回れば、本来の商品を求めている客ほど締め出されるという逆転が起きる。
完売を成功だけで終わらせてよいのか
集英社は今回、通常より50万部多く発行し、1人1冊での購入も呼びかけた。出版社として異例の対策を講じたことは確かだ。
しかし、店舗を変えて購入する行為や、家族や知人を通じた複数購入まで完全に防ぐことは難しい。大量に増刷しても、全国の店舗へ均等に行き渡るとは限らず、地域や店舗によっては早い段階で在庫がなくなる。
販売部数だけを見れば、33号は大きな成功を収めたといえる。しかし、その裏で『アオのハコ』の最終回を読みたい読者が雑誌を買えず、完売の原因となった付録カードが一部店舗で買取不可となっている。
表紙でも販売面でも、『アオのハコ』の最終回より『ONE PIECE』カードが前面に出た今回の33号。付録によって雑誌が売れることと、掲載作品の読者が満足することは、必ずしも同じではない。
限定グッズを付ければ商品は売れる。しかし、そのたびに本来の商品を支えてきた人が買えなくなるのであれば、増刷や購入制限だけでなく、付録の配布方法そのものを考え直す必要がありそうだ。
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